事例紹介

痛みをどう考えるべきか?最新の視点と従来のアプローチを融合した新しい解決策

はじめに

腰痛や肩こり、膝の痛みなど、現代人にとって痛みは避けられない問題のひとつです。
しかし、私たちが「痛み」と聞いたときに思い浮かべる原因や治療法は、実は一面的であることが多いです。従来、「痛み=体の損傷」という考え方が一般的でしたが、近年の研究では、痛みは脳や神経の働き、心理的・社会的要因と密接に関係していることがわかってきました。

このブログでは、従来の考え方と最新の知見を融合し、痛みに対する新しいアプローチをご紹介します。


従来の「痛み」の考え方

これまでの医療や治療現場では、痛みは身体の損傷や異常が原因とされてきました。たとえば、「膝が痛い」と聞けば、多くの人は「関節が擦り減っているのではないか」と考えます。
X線やMRIなどでその部分を確認し、炎症や損傷が見つかれば、それが痛みの原因だと診断されるのが一般的でした。また、治療も痛みを感じる部位に直接アプローチする方法が主流でした。例えば、腰痛であれば腰をマッサージし、緊張を和らげる施術が行われてきました。

これは急性の痛みに対しては非常に効果的です。
しかし、慢性的な痛みの場合、この局所的なアプローチだけでは根本的な解決に至らないこともあります。ある50代の女性が慢性腰痛で治療を受けた例では、腰のマッサージで一時的には楽になったものの、数日後には再び痛みが戻ってしまいました。後に原因を探ると、骨盤の位置のずれや股関節の硬さが関与しており、それらを改善しなければ再発を防ぐことは難しいという結論に至りました。


最新の「痛み」の考え方

近年では、「痛みは体の損傷だけでなく、脳がどのように解釈するかによっても左右される」という新しい視点が注目されています。例えば、傷が治った後も痛みが続くのは、脳が「危険だ」と判断して痛みの信号を送り続けているからだと考えられます。これは火災報知器に例えるとわかりやすいかもしれません。本来の役割であれば火事の際に警報が鳴るものですが、怪我が治った後も警報が鳴り続ける状態は、過敏な火災報知器と同じような状況です。

また、痛みを「バイオ・サイコ・ソーシャルモデル」で捉えるアプローチも重要です。
このモデルでは、痛みは身体的な要因(バイオ)だけでなく、心理的な要因(サイコ)や社会的な背景(ソーシャル)からも影響を受けるとされています。

実際に、30代男性が肩の痛みを訴えて来院したケースでは、デスクワークの姿勢改善に加え、仕事のプレッシャーが肩の緊張を引き起こしていることがわかりました。姿勢の矯正だけではなく、ストレス管理のアドバイスを取り入れたところ、痛みが大幅に軽減しました。

さらに、慢性的な痛みには「神経の過敏化」が関わることもわかっています。この状態では、本来なら痛みを感じない刺激にまで神経が反応してしまいます。これを「中央感作」と呼び、痛みをコントロールするためには脳を「再教育」し、正常な状態に戻す必要があります。


nicoriLaboの考え方

従来の考え方と最新の知見を融合することで、痛みに対してより効果的に向き合うことができます。まず、治療では痛みのある部位をケアするだけでなく、身体全体を評価する視点が重要です。膝の痛みで来院した40代女性の例では、膝そのものの状態を確認した後、股関節や足首の動きも調べることで全体のバランスを改善するアプローチが功を奏しました。

また、患者の主観を重視することも大切です。「どんな時に痛むのか」「どうすれば楽になるのか」といった質問を通じて、患者自身が痛みを正しく理解し、恐怖心を取り除くサポートを行います。あるぎっくり腰の患者には、痛みの原因を説明しながら、負担の少ない動作を練習することで、再発リスクを大幅に下げることができました。

さらに、痛みを感じた時の「脳の学習」をリセットするためには、小さな動きから安全に挑戦し、痛みのない範囲を広げる作業が必要です。このプロセスは、患者の動作を分解し、新しい動きのパターンを脳に学習させることを意味します。


おわりに

痛みは複雑な現象ですが、従来の治療法と最新の研究を組み合わせることで、根本的な解決が見えてきます。
身体全体を評価し、痛みに対する不安を取り除き、正しい動きや習慣を取り戻すことが、慢性的な痛みの改善につながります。NicoriLABでは、治療と運動の融合を通じて、痛みのない健康的な生活をサポートしていきます。

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長島康之

長島康之

健康であれば、何でもできる。

長島康之 (ナガシマヤスユキ):柔道整復師(国家資格)。 株式会社nicori代表取締役(nicoriGYMとnicori整骨院を運営)。 現在はプロ野球球団の監督として采配をふるう、元プロ野球選手工藤公康氏の元トレーナー。

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