〜nicoriの考える本質的アプローチ〜
1. 腰部脊柱管狭窄症とは?
腰部脊柱管狭窄症(Lumbar Spinal Stenosis, LSS)は、加齢や椎間板変性によって脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されることで発症する。

特徴的な症状
- 間欠性跛行(claudication):一定距離を歩くと足のしびれや痛みが生じ、休むと改善する
- 腰部の過伸展(反る動作)で症状悪化:立位や歩行時に痛みが増し、前かがみで軽減する
- 臀部や下肢の感覚障害・筋力低下
間欠性跛行は 閉塞性動脈硬化症(PAD) との鑑別が必要とされる(Katz et al., 1995, JBJS)。また、MRI上で脊柱管狭窄が確認されても無症状の人が多い ことが報告されている(Ishimoto et al., 2012, Spine)。
一般的な治療と課題
整形外科や一般的な整骨院で行われる治療には以下のようなものがある。
治療法 | 期待される効果 | 課題 |
---|---|---|
薬物療法(NSAIDs、プレガバリン) | 炎症や神経痛の軽減 | 根本解決にはならない |
ブロック注射(硬膜外ブロック) | 即効性がある | 効果が一時的、繰り返し必要 |
理学療法(ストレッチ・電気治療) | 症状改善が期待できる | 個別最適化されていないと効果が薄い |
手術(除圧術・固定術) | 重症例では有効 | 術後の筋力低下、再発リスク |
nicoriでは、「脊柱管が狭いから症状が出る」という考え方だけではなく、機能的な問題にも注目する。狭窄があっても痛みのない人がいることを考えると、症状の出現には 姿勢や動作の問題 が関与していると考えられる。
2. 腰部脊柱管狭窄症の根本原因
多くの患者に共通するのは、腰椎の過伸展(反りすぎ) である。

腰椎の過伸展が症状を引き起こす理由
- 腰を反ると脊柱管が狭くなり、神経の圧迫が強くなる
- 前かがみで症状が軽減するのは、神経ストレスが減るため
腰が反りすぎる原因
- 骨盤の前傾が強い → 腰椎の前弯が強まり、狭窄が悪化
- 股関節の伸展制限 → 歩行時に腰を反る代償動作が生じる
- 腹圧の低下 → 体幹の安定性が低下し、腰を反ることでバランスを取る
このように、腰部脊柱管狭窄症は単なる加齢の問題ではなく、「身体の使い方」の影響が大きい。そのため、nicoriでは「腰椎の構造」に対するアプローチだけでなく、「動作の改善」に重点を置いている。
3. nicoriの考える機能的アプローチ
目標
腰椎の過伸展を防ぎ、神経ストレスを軽減する
① 骨盤のポジションを調整(前傾をリセット)
ターゲット:腹圧(IAP)を高める
- 腹横筋・腹斜筋の適切な発火を促し、体幹の安定性を向上させる
- ドローインではなく ブレーシング呼吸 を指導する
- 腹圧と脊柱の安定性の関連についてはHodges et al., 1997, Spineが報告している

▶ エクササイズ
- カエル足ブリッジ(Frog Bridge)
- 骨盤ティルト(Pelvic Tilt)
② 股関節の機能改善
ターゲット:股関節伸展と内旋の可動域を確保

- 腰椎が反らなくても歩行できる状態を作る
- Czuppon et al., 2018, JOSPTでは、股関節伸展可動域の低下が腰部への負担を増やすと報告されている
▶ エクササイズ
- ヒップフレクサーリリース(腸腰筋リリース)
- 股関節内旋ストレッチ(90/90ストレッチ)
③ 足底感覚を改善
ターゲット:足の接地感覚を整え、重心を安定させる

- 踵での荷重が適切にできると、過剰な腰椎伸展が減る
- 足底のメカノレセプターを活性化すると、体幹の安定性が向上する(Kavounoudias et al., 2001, Exp Brain Res)
▶ エクササイズ
- スプリットスクワット(踵荷重を意識)
- バランスディスク立位(足裏の感覚入力)
4. まとめ
- 脊柱管が狭い=必ず症状が出るわけではない(機能的な要素が関与)
- 腰椎の過伸展が神経ストレスを増大させる
- 骨盤・股関節・足の機能を改善することが根本治療につながる
- 腹圧を高めることで腰部の安定性を向上できる
- 足底の感覚を整えることで正しい姿勢・歩行を獲得できる
nicoriの考え
腰部脊柱管狭窄症の治療は、脊柱管を広げることではなく、神経ストレスを軽減する身体の使い方を身につけること が重要である。今後も、nicoriでは運動療法を通じて、より多くの患者が根本的な改善を目指せるような情報を発信していく。
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